Bリーグ初出場の瞬間、覚悟は決まっていた。
「早くコートに立ちたい一心でしたし、名前を呼ばれた瞬間はもう絶対シュートを決めてやるという気持ちでした」
広島ドラゴンフライズの松村竜吾が10月5日に行われたBリーグ開幕節の川崎ブレイブサンダース戦Game2でデビューを飾った。
23歳の松村はシーズン開幕前の9月、怪我人が続出していた広島に練習生として参加していた。「オールラウンドにオフェンスもディフェンスもできて、どのポジションでも対応力を活かしてプレーできることが強み」という190センチ90キロのスモールフォワードは約2週間後、練習での姿勢を評価され、渡部琉のインジュアリーリスト入りに伴って選手契約の締結に至った。
「練習生としてまず呼ばれたとき、僕はチームが決まっていなかったので、なんとしてでもこのチャンスをつかみ取るという気持ちで練習していて、そこからチームと契約できたのはうれしく思います」
今シーズンの広島は大黒柱のドウェイン・エバンスや地元期待の三谷桂司朗などの継続メンバーに加えて、新たにクリストファー・スミスや晴山ケビンなどの実力者も加入した。
「今季の広島は優勝を狙えるぐらいタレントがそろっている」と松村も言うチームの中で、プレータイムを得る壁は高いが、練習中から「1秒でもコートの中で気を抜けないです」と常に緊張感を持って取り組んでいる。
コート外では、「僕から喋ることがあまりないので周りの人からいじってもらえますし、過ごしやすい環境なので助けてもらっています」と先輩たちのサポートを受けながらチームにも馴染んでいった。
練習生から這い上がってきた背番号5には、開幕節でさっそく出番が訪れた。川崎戦のGame2、28点リードで迎えた第4クォーターの終盤に出場し、Bリーグデビューを果たした。残り2秒のラストプレーではキャプテンの上澤俊喜からパスと激励の言葉が飛んできて、渾身の3ポイントシュートを放った。
「僕が入ったときはもう勝負は決まっていましたが、最後にトシさんからパスが来て『やれ!』と言われたので迷わず打てました。もう打とうと思って打ったんですけど、外れてしまったので、また次出た時は必ず決めるという気持ちで臨みたいです」
デビュー戦でのプレー時間は1分14秒。短い時間でも打ち切った最初のシュートは大きな1本だ。
「僕のような出場時間が少ない人は、限られた時間の中でどれだけインパクトを残すかが大事だと思っています。なので、周りに任せるのではなく、少しエゴを出してでも自分で点を取りに行く姿勢が大事だとわかっていたので、それを実行するのみでした」
この記念すべき試合を、日本大学でともにインカレ優勝を経験した米須玲音が見守っていた。川崎所属の米須は右肩の怪我で離脱中のため、仲のいい同期とはコート外での再会となった。
松村は、「2試合目が終わった後にベンチにいたので、そこでまたお互い健康な時に試合をしようという話はしました」と明かし、「あとでバスケットLIVEを見返したら、僕がコートに出た時に(米須が)笑っていたので、すぐにメッセージで『笑うなよ』って感じのやり取りはしました」と笑みをこぼした。
次に会う時はコートの上で。そのためにも今は広島で取り組み続けていく。「チーム内の競争でプレータイムを勝ち取って、自分の強みを出して勝利に貢献できるようになりたいですし、いずれは優勝の立役者になれるように頑張りたいです」。Bリーグの舞台で松村の挑戦がスタートした。
取材・文・写真=湊昂大
