6月末、GK木稲瑠那は岡山にいた。昨季終了後にサンフレッチェ広島レジーナから古巣の岡山湯郷Belle(なでしこリーグ1部)に移籍したGK福元美穂のプレーを見るためだった。
木稲は楽しそうに振り返る。
「フクさんが岡山に行くって聞いたときに、(DF塩田)満彩が岡山の人なので一緒に行こうと話してして。近いから、もう行くしかないねって感じでした」
岡山出身の塩田と試合会場を訪れ、母校の作陽学園高校の試合を見に来ていたGK石田ひなはと現地で会って一緒に観戦した。ピッチでは、ピンクのGKユニフォームをまとった大先輩がゴール前で変わらぬ存在感を放っていた。
「フクさんは相変わらず元気で、1番声が出ていましたし、その声を聞いてやっぱり落ち着く感じがありました。他のチームでもプレーでみんなを引っ張っていく姿は変わらないし、その姿を見られてよかったです」
レジーナは、昨季限りで近賀ゆかり(現チームアンバサダー)が現役を引退し、福元はキャリア最後に古巣復帰を選んだ。チームをけん引してきた偉大な2人が退団し、監督も代わって迎える新シーズンは、選手それぞれにリーダーシップが求められる。
まだ新チームは始動したばかりだが、木稲は「みんなが引っ張っていくという気持ちも少しずつ見えてきていると思います」と選手たちの変化を明かす。
「今まではキンさんやフクさんが声を出して率先してチームを盛り上げてくれましたけど、その2人が抜けたことで周りから『引っ張っていく選手がいない』と言われるのも嫌ですし、自分もそこは心がけています。若手含めて他の選手も結構声を出すようになっていると思います」
レジーナのGK陣は移籍した福元と現役を引退した巻胡花の2人がいなくなり、27歳の藤田七海、24歳の木稲、18歳の石田の3人体制となった。
1番を背負う木稲は、過去4シーズンのリーグ戦でGK最多の63試合に出場し、昨季も全試合フル出場でリーグ2位の失点数に貢献。3月には日本代表初招集も果たした。来月で25歳になる紫の守護神は、新たなチームをけん引していかなくてはいけない存在の1人だ。
「新しくシーズンが始まって、監督も変わって環境も変わって、やっぱり正GKも確立されているわけではないので、ひなはは(U-19)日本代表にも入っているし、藤田選手もずっといいパフォーマンスを見せているので、そこは自分自身ちょっと不安を感じながら日々やっています。でも、そういう高い緊張感の中でプレーできることが、試合にもつながるし、誰が出ても応援してもらえるチームなのかなと思います」
木稲が新シーズンでこだわるのは、「どれだけ結果を示せるか」ということ。「昨季のゴールを割らせない堅さはこれからも続けていきたいし、次は失点数をもっと減らしてリーグの中で1位を取りたい。その中でビルドアップやロングキックでの配球で、攻撃に絡むところもしっかりやっていきたいです」と力を込めた。
新チームで臨む勝負の年。木稲は緊張感とともに背番号1のGKユニフォームを身にまとう。
取材・文・写真=湊昂大
